帝王切開

朝、緊急の帝王切開術の麻酔があった。
妊婦は昨日の夜から経腟分娩を試みていたらしいが、どうしても降りてこず、帝王切開となったので、もう、陣痛でへろへろになってて、初めは話もまともに聞けないような状態だった。
なので、本当は硬膜外カテーテルも留置しようかと思っていたのだが、腰椎麻酔のみですることにした。

「麻酔がかかれば痛くなくなるからそれまでがんばってね!」と妊婦を励まし、いざ準備へ。
実際に麻酔を担当するローテーターの先生は腰椎麻酔もあまりしたことがないらしい。
麻酔科医の必要性が叫ばれて、大学の関連施設では麻酔科医が常勤またはバイトで行っているところが多い。だから最近は5,6年目の外科医が腰椎麻酔をしたことがないってこともあるのだ。(だから麻酔科に研修にくるんだけどね。)
椎間を定めて、局麻の投与量を指示して、さらに妊婦さんに「がんばっておなかをかかえようね!」と声をかけて、できるだけ針を刺しやすい体位にする。(これ、重要)
ローテーターも額に汗して椎間をゆっくりさしていく。ときどき流出をみるが、まだない。もう少しすすめて・・・・ぷつっという硬膜を破った感触がしたところで再度髄液の流出を確認すると、ゆっくり液があがってきた。90度ずつ針を回転させて、流出OK!薬液をゆっくり注入する。

「もう少しで楽になってくるよ!」と声をかける。

薬液を入れ終わり、背中の消毒を落としている間に、あれれ、さっきまでばたばたしていたのに、ふうーって感じになり、「なんか、楽になってきたー!」

仰向けにして、少し頭をあげる。麻酔の確認して、Th6までOK.あと30分もすれば胸くらいまであがるかな。もう大丈夫。

離被架がたち、消毒が済み、覆い布がかかり、外科医・助産師がスタンバイして、さあ、手術開始。
全然痛くない!よかったー。(当たり前だけどいつも緊張する)

赤ちゃんが娩出されて、泣き声が響き渡る。

さっきまで目をつぶってた妊婦さんが、パチッと目をあけて笑う。「あ!」
助産師に手渡された赤ちゃんを目で追いながら、その瞳からは涙が零れ落ちてた。
よかったねー。元気だよ。と声をかけると、うんうんってうなずいた。

体をきれいにしてお母さんのところに赤ちゃんが連れてこられる。お母さんはまだおなかを縫っているから自由になれないけど、手の押さえをはずして赤ちゃんに触れてもらう。すっごくうれしそうで、こっちまでうれしくなる。

「また後で、お部屋で会おうね」って赤ちゃんが手術室から一足先に出て行くのを名残惜しそうに見ているお母さん。もう、すっかり母の表情。

ふと、私に気づいて、「麻酔ってすごいですねー、さっきまであんなにつらかったのがうそみたい!」ってにこにこ。日ごろあまり患者さんと言葉を交わせない私たちを元気付ける言葉。
麻酔科医やっててよかったな。本当に。

腰椎麻酔だけだから、術後は痛いかもしれないけど、がんばってね。今度帝王切開になるときには、ちゃんと硬膜外、いれてあげるから・・・・
by runa123 | 2005-05-09 21:36 | お仕事


女性麻酔科医るなの日々思うことなど・・・


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